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M2の米山です。私は外国語学部卒業後、重工企業やIT企業にて数年働き、退職して、IMDに来ました。そしてスロベニアにインターンに行ったのでご紹介します。

インターン先

  • 国/町:スロベニア / コペル(Koper)
  • 大学:プリモルスカ大学
  • 期間:2023年2月5日〜3月28日(約2ヶ月)


スロベニアはイタリアの東・オーストラリアの南・クロアチアの西にあるバルカン諸国の1つです。ヨーロッパですが、小さい国なので、アジア人がほどんどいません。日本人は特に珍しいのか現地の大学で、「スロベニアについてどう思うか」というインタビューもうけました。

なぜスロベニア?

本研究室では、プリモルスカ大学のHICUP Labと数年前から繋がりがあり、2022年にHICUP Labから准教授と学生が2週間、本研究室に滞在されました。その際に、先方の研究「言語学習方法『キーワードメソッド法』とAI画像生成を組み合わせた言語学習システムの開発と効果検証」における、被験者実験を担当させてもらいました。その共同研究の続きを、スロベニアで行いました。

上記で述べた言語学習方法『キーワードメソッド法』をARで実装した研究は下記からご覧いただけます。

Weerasinghe, Maheshya, et al. “Vocabulary: Learning vocabulary in ar supported by keyword visualisations.” IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics 28.11 (2022): 3748-3758.

 

インターン内容

インターン内容としては3種類行いました。

  1. 「なぜスロベニア?」で述べた被験者実験の続きと、被験者実験のデータ分析
  2. 国際学会に提出した論文のレビュワからのレビュの考察
  3. 自分のメイン研究の発表・改善

DALL-E2といった話題のAI画像生成ツールの結果を比較するために実験を行い、国際学会に提出しましたが残念ながらアクセプトはされませんでした。レビュワからのコメントを反映して他の国際学会に提出予定です。

また、自分がNAISTで行っているメイン研究を発表し、フィードバックをもらい、メイン研究のシステムの開発を進めました。

開発はあまりやっていないのですが、ユーザ実験、Rを使った分析、レビューの考察・改善など、教授方とのミーティングなど今後の研究に役立つインターンとなりました。

研究室の雰囲気

研究室は准教授4人、博士課程8人、修士課程1人(男性学生5人 女性学生4人)という小さな研究室です。ヒューマンコンピュータインタラクション分野と機械学習分野の研究をメインに行っています。准教授は非常にフレンドリーで、一緒にハイキングなども行きました。

学生生活

学生同士の仲が非常によく、誰かの誕生日の時にはみんなで誕生日会をしました!私もちょうど誕生日だったので、誕生日会をしてもらいました。

ケーキ作りが得意な数学者のケーキと、スリランカ料理パーティです。

博士課程の学生は国籍も多様ですが、バックグラウンドも多様です。

  • 修士からストレートで博士に進んだ人
  • ギャップイヤーと呼ばれる自分探しの年を挟んでから博士に進んだ人
  • 企業で働いてから博士に進んだ人
  • 既婚者で博士進学のために、スロベニアに配偶者もつれてきた人(男女)
  • 子育てしながら博士に進んでいる人
  • 人間科学部や経済学部から、コンピュータサイエンスの博士課程に進んだ人

日本の大学院では、ここまで多様なのは、ほとんどないのではないでしょうか。

スロベニアの博士学生は学生というより、大学から給料をもらって、研究員候補として働いているという立場なので、どんなバックグラウンドを持っていても研究やすい環境だと感じました。ただ働いている立場なので、研究だけでなく学部生に対して授業も行わないといけません。

日本では博士学生は「学生感」が強いので、一旦社会に出たり、結婚・出産をすると挑戦しにくいイメージがあります。

また、日本のような「3年で博士を取って大学院卒業して即就職」といったプレッシャは無く、博士課程学生として契約期間4年まで延長できたり、既にPhDを取得し、卒業は決まっているが、次の仕事が決まるまでは大学院で講師として雇ってもらうなど、様々な選択肢があるのが良いところだと感じました。

修士や学部生も、2(4)年で必ず卒業し、即就職しないといけないわけではなく、卒業後にギャップイヤーやインターンを行って自分の進路を決めるようです。

自分は学部の時に、就職して何がやりたいかがいまいち分からず、授業や研究の時間を就活にとられ、とりあえず就職した経験があるので、魅力的に感じました。

多様な学生がいるため、ランチやカフェで話す内容も深くて楽しかったです。

  • 国際女性デーは必要なのか?
  • 各国の医療制度の良し悪し
  • 自国が破綻した原因について
  • 民主主義と社会主義

社会主義国家では、給料がほぼ一律なので、サービス業に従事した方が、観光客からのチップで儲けられる。そのため弁護士・エンジニアなどスキルのある人は国外脱出する。自国通貨は機能しておらず、謎の電子マネーだけ使える。闇市場で自国通貨を電子マネーに変えられるという話が一番興味深かったです。

インターンの醍醐味は研究ももちろんですが、上記のような国ごとの制度・文化の差を感じられるところだと考えています。

研究室の窓からの景色です。

大学の建物のキッチンからの景色です。朝食はこの景色を見ながら食べていました。

スロベニアでの生活について

治安

私は30カ国以上訪れましたが、スロベニアのKoperほど治安がいいヨーロッパの国は未だかつて出会ったことがありません。

食文化

お肉が好きなら、幸せ。ベジタリアンには地獄…(?)この写真は、スロベニアや周辺のバルカン諸国で有名な「チェバビ」という縦長形状のステーキです。牛肉と豚肉、牛肉とラム肉などお肉をミックスして作られています。

イタリアの隣国なので、コーヒーもとても美味しい!研究に疲れたらみんなでカフェに行っていました。また、1杯2ユーロ以下(約280円)なので、週2,3で研究室のみんなで通っていました。

食費を浮かせるために、自炊もしていました。かなりお世話になったスロベニア料理を詰め込んでくれた缶です。ベーコンとキャベツの煮物(?)です。美味しいです。ちなみにスロベニアのKoperは小さい街なため、日本食材・調味料はほとんど手に入らず、日本料理もありません。白米を食べないとやってられない方には、生活は厳しいかもしれません。日本食材を手に入れるには、イタリアか、スロベニアの首都リュブリャーナ(Koperから100km)までいかないといけません。

物価

外食で使用するお金は日本と同じくらいですが、量が日本の倍ほどあります。また、野菜や果物は日本より安いです。日用品も日本と同じくらいの価格です。

言語

公用語はスロベニア語ですが、ほぼみんな英語を話します。しかしスーパーなど日用品の表記はスロベニア語・イタリア語・ドイツ語表記なので、日用品の購入は一苦労。ARにたくさんお世話になりました。

洗濯機の表記すら読めなかったので、Googleレンズを使用。

住むところ

Koper(コペル)は古い街で、リゾート地なので、学生用の賃貸があまりありません…。

私は1ヶ月250ユーロ(約5万円)の激安賃貸に住みましたが、約4畳、激狭キッチン(ほぼ使用していない)、トイレ壊れる、隣人の電話の声丸聞こえ、洗濯機壊れるという劣悪環境でした。そのため、研究室に朝08:00から夜10:00まで滞在していました。。

公共交通機関が….

Koper駅は存在するけども、工事中につき運行開始未定。バスはほとんどなく、かつ土日になると本数が激減するので、移動が非常にしづらい国です。現地の方々は車を持っているので、出かけたいときは、アクセスの悪い場所へ行きたいときは、車を持っている友人に乗せてもらいました。

スロベニアの観光地

Piran(ピラン)

大学のあるKoper(コペル)からバスで30分ほどで行ける観光地Piran(ピラン)。青いアドリア海と赤煉瓦の屋根のコントラストが素敵な街です。Piranは良質な塩が取れることで有名で、お土産用の塩が販売されています。

Ljubljana(リュブリャーナ)

Ljubljana(リュブリャーナ)はスロベニアの首都で、Koper(コペル)からは100kmほど離れています…旧市街の街並みはもちろん、ビジネスや娯楽はほとんどリュブリャーナにあります。

Koper(コペル)では日本料理は食べられませんが、リュブリャーナにはあります。

春のお祭り

冬にお別れを告げるフェスティバルが2月の中旬にスロベニア各地で開催されます。

Škocjanske jame(シュコツィアン洞窟群)

スロベニアは洞窟大国なので、世界遺産に登録されている洞窟がいくつかあります。中身は壮大なのですが、写真撮影が禁止なので、ぜひ「シュコツィアン洞窟群」で検索してみてください。

 

Limske Toplice(リムスケ トプリツェ)

スロベニアは実は日本みたいに、天然温泉が湧き出ています。コンピュータサイエンス学科の学科旅行(?)でLimske Toplice(スロベニア後でローマの温泉)に温泉旅行に行きました。日本人としては温泉と呼び難いくらい、ぬるく、塩素臭がすごいのですが、一応天然温泉….らしいです。

 

周辺国へも簡単アクセス!

イタリア

車で45分でイタリアの大都市「トリエステ」に行けます。トリエステはイタリアの観光地の中でも比較的治安が良く観光のしやすい街です。

トリエステの街並。

コーヒー(エスプレッソ)の本場イタリアにて、「アメリカーノ」を頼んだ結果….エスプレッソ+お湯が出てきました。ごめんなさい。

 

こちらはムッジャというスロベニア国境に近いイタリアの小さな街の景色です。

ボスニア・ヘルツェゴビナ

インターン最後の週末に、学部生のツアーに参加し、ボスニア・ヘルツェゴビナへ2泊3日で行きました。往路バス7時間、復路バス12時間、72時間スロベニア語オンリーの過酷ツアーです。

ボスニア・ヘルツェゴビナは1991年から1995年までボスニア・ヘルツェゴビナ紛争という、民族紛争がありました。そのため、街のあらゆるところに銃弾が残っています。「民族浄化」と呼ばれる残虐行為が20世紀になっても行われていたのがこの内戦です。

1984年に、ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)のサラエボで共産圏初の冬季オリンピックが開催され、大成功でした。しかし現在はオリンピック跡がボスニア紛争の死者の墓地となっています。あまりの墓跡の多さに悲しくなります。

自分は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の難民の友人がいたり、学部の時にイスラム教について学んでいたためボスニアにはずっと行ってみたいと思っていました。

バニャルカ

ボスニア・ヘルツェゴビナはボシュニク人、セルビア人、クロアチア人の主要3民族の連邦国家で成り立っています。バニャルカはセルビア人が自治している「スルプスカ共和国」の首都です。

 

サラエボ

サラエボはボスニア・ヘルツェゴビナの首都です。第一次世界大戦勃発のきっかけとなったサラエボ事件はここで起きました。サラエボは、宗教(イスラム教、正教会、カトリック教会、ユダヤ教)が混在している歴史的に興味深い町でした。

イスラムっぽい街並み

カトリック教の教会と西欧っぽい街並み

ただ観光地なため、スリが多くリュックは常に前に背負わないといけません。

モスタル

モスタルは日本ではあまり有名ではないですが、有名なボスニア・ヘルツェゴビナの観光地です。古き良き街並みとエメラルド色の川が素敵な町です。内戦でほぼ壊滅的な状態になりましが、復旧されました。

最後に

英会話

インターンで悩むポイントは「英会話」かと思います。英会話は勉強しても上達しません。「喋らないと生きていけないな」という状況に身を置いて話せるようになります。

自分は学部の時の授業が英語だったり、就職してから海外出張に行かないといけなかったため、日常会話程度なら不自由はしていないはず….?そして話さなくなる期間が長くなると忘れます。

なのでインターンで話さなければいけない環境に身を置けば多分大丈夫(?)

社会人で退職して修士・博士を検討している人へ

失業手当の期間を考えて退職してください。

自分のキャリアのためと考えて行う大学院進学のための退職は、ハローワーク(厚生労働省)的には「就労の意思がない」とみなされ失業手当をもらえません。また、失業手当は退職後2年以内が需給可能期間のため、汗水垂らして働き、何年も払ってきた雇用保険料が一瞬でパーになる瞬間です。退職時点で入学が決まっていると失業手当をもらえないので、色々予定をたてて退職してください!