こんにちは,M2の李です.
9月10日から13日にかけて,ヒューマンインタフェースシンポジウム2013に参加してきましたので,その報告をさせて頂きます.

こちらは年に一度行われるヒューマンインタフェース学会のシンポジウムになります.
今年は早稲田大学西早稲田キャンパスにて開催されました.
本研究室からは私,木村,山本先生,加藤先生の4名が参加しました.

今年のシンポジウムのテーマは「共創」で,さらに「共創セッション」で発表を行う身として,事前に共創について調べていたものの,漠然としたイメージしか持つことができませんでした.
正直な所,参加を終えた今でも完璧に理解したとは思えないのですが,初日のワークショップで多摩美術大学の須永先生のおっしゃっていた,「design for user からdesign with userへ」という言葉が,共創という言葉を特徴付けるキーワードのように感じました.
ワークショップ
初日は前述したようにワークショップに参加しました.
ワークショップは同時に複数開催されていたのですが,私はその中でも「共創と理論−生活者と共にデザインする場を考えよう-」に参加しました.
こちらのワークショップではまず,各自が持っているモノを紙にスケッチしました.私はちょうどポケットにイヤホンが入っていたため,イヤホンをスケッチの対象としました.
スケッチにおいてはいくつか条件が提示されました.
1. スケッチはテーブルにおいたクレパスを用い,対象の色を再現しようとするのではなく,光の当たり方や影の付き方などに着目に,感じたままの色を用いること.
2. 対象物の全体像は描かないこと.自身が気になる箇所や気に入っている箇所に焦点を置いた構図で描くこと.
実際のスケッチはこちらになります.
右上が私が描いたイヤホンで,右上から左に4つ目のシャープペンシルが木村が描いたものです.

次にZuzieというコラボレーションツールを用いてそれぞれの絵を配置しました.
Zuzieに関しては言葉で伝えることがむずかしいので,こちらのリンク先の動画を見て頂ければと思います.
http://www.mediaexprimo.jp/zuzie_ws/
簡単に説明しますと,それぞれの描いたイラストを画像化し,それらの写真に対してチームでストーリーを持たせるシステムです.
システムの操作感覚としてはパワーポイントが近いように感じますが,パワーポイントがプレゼンテーションを作ることを目的としているのに対し,こちらはそれぞれの写真にストーリーを持たせることを目的にしています.
私たちのチームでははじめ,モノの固さや色などに着目し,それらのモノを用いたカテゴライズを行うことで,ストーリーを作成することを考えていましたが,途中からチームに参加された須永先生の助言で,物体のもつ形状に着目したストーリーを作り始めました.
実際の作品を写真に納めることはすっかり忘れていたのですが,一緒に参加した別チームの木村の発表でワークショップの雰囲気が伝わればと思います.

ワークショップの中で須永先生が何度も,目的を持とうとするなとおっしゃていました.
何か目的を持って取り組むのではなくて,そのときそのときに生じた成り行きを楽しめと.広い視野を持つことを繰り返し強調されていました.
目的を持って取り組め.ということは日常的によく聞きますが,目的を持つなという主張には新鮮味がありました.
実際に私のチームでも,当初の予想からはるかにかけ離れた作品が出来上がり,そこに至るまでの過程をとても楽しむことができました.
スケッチでは色を使わないといけなかったり全体を描いてはいけなったり,システムではUndoができなかったりと,様々な制約が課せられていましたが,だからこそどのような色を使うか,どういう構図で絵を描くか,また失敗すらもどうやって作品に取り込んでいくかなど,その人らしさがよく出る上に,チームでの一体感が生まれやすいワークショップになっていたと感じました.なんとなくではありますが,共創というのはこういう過程も大事にする考え方なのかなあと感じる瞬間がありました.
一般講演発表
二日目からは一般講演発表が行われました.
私は発表初日のトップバッターを努めました.発表タイトルは,「事前共有知識に基づくアウェアネス支援のための情報可視化手法の検討」です.一言でいうと,遠隔にいる相手の状況を知ることで遠隔コミュニケーションを円滑にしようという研究です.発表は20分だったのですが,緊張からか予定より早く終わってしまいました.
終わってみると,オーバーして質疑応答の時間が削られるよりは良かったかなあ,,と思いますが,それでも与えられた時間はフルに使いたかったなあという悔いが少し残っています.

質疑応答ではある程度予想していた質問もありましたが,データに関する質問があり,手元に参照するものがなく必死に思い出しながら回答するという場面がありました.
発表を行うにあたり,十分な発表練習をすることはもちろんですが,ちゃんとデータをまとめた資料を手元に用意しておく必要があると強く感じました.
発表が終わってからは,他の参加者の方々の発表を聞いていました.
この分野における研究はとくに解がなかなか見つからなかったり,そもそも解がない問題を対象に扱っているため,人によっては何か変なことをやってるなあと感じると思うのですが,その分,多様な価値観の元で研究が行われてるので,はじめから否定的な立場で聞いてしまうと,その先にあるおもしろみになかなか辿り着けないように思います.当然のことながら注意深く聞いていれば,どのような研究においても興味深い点を見つけることができて良いです.
その中でもとくに,”身体的つながり感の遠隔支援を目指したFogBoxの開発”という発表が興味深かったです.
これは,水蒸気を発生する装置とプロジェクタが一体となった一辺15cmほどの立方体のボックス(FogBox)で構成されており,水蒸気上に遠隔にいるユーザの腕を投影することで,遠隔環境における身体的なつながり感を形成することを目的としています.
水蒸気を用いたホログラムのようなものはテーマパークなどのショーで見たことはありましたが,この研究で特に面白いと思った箇所は,遠隔にいるユーザの腕の存在感を映像のみで表現するのではななく,水蒸気の下に腕の影も同時に表示することで,存在感を高めていることです.これにより動画を見る限りにおいては,まるで本当にそこに手があるかのように見ることができました.
石井裕先生らによる,Clear Bordを思い出しながら発表を聞いていたのですが,Clear Bordが協調作業に焦点をおいたシームレスな遠隔コラボレーションシステムに対し,こちらは他者との身体的なつながり感に焦点をおいたシステムであり,霧ディスプレイに投影された手の像がまるで空間に浮いているようで,これは実際に体験してみたいなあと思いました.
イブニングセッション
三日目の夜にはイブニングセッションが行われました.
予想に反して学生の数が圧倒的に少なく,肩身の狭い思いをしていたのですが,ポスター発表で参加されていた他大学の学生と知り合うことができ,普段互いに感じている研究に対する色々なことを話すことができました.研究を進めていく上での悩みを共有できて,こういう同じ研究領域の人と議論ができるということが,学会の持つ最大の魅力なのかなあと感じました.

学会に参加するためには論文投稿や発表練習など,クリアすべき課題が多く大変ですが,やはりそれ以上に得るものが多いと感じました.
次回はもっと良い発表ができるように,今後の研究に取り組んでいこうと思います!
P.S. 発表を終えた木村に近づくと,背中に白く輝くものがありました.発表に支障がなかったようでよかったです.
