こんにちは, M1酒井です.
このブログでは学生が参加した会議, 研究会の報告, 研究室イベント等の報告を対外的に行うことを目的としています.
今回はCEDEC2014です.
CEDEC(Computer Entertainment Developers Conference)とは, ゲーム中心とするコンピュータエンターテイメント開発に関わる方向けのカンファレンスです.
詳細はこちら(http://cedec.cesa.or.jp/2014/)から見ることができます.
2014年9月2日-4日にかけて, パシフィコ横浜で開催されました.
今回私は見学者(発表はしていない)として参加しました.
各セッションを見た感想を中心に, 会場の雰囲気等を感じていただければと思います.
参加者の7割ぐらいがゲーム開発者で残りが学生といった構成でした. 開発者向けの会議ですが, 学生の割合も年々増加しているそうです. 今年は過去最多の約6500人が参加したとのことです. 広い会場ですが, 常に人があふれていました.

パシフィコ横浜の写真. 見づらくてすみません… JR横浜や桜木町からあるいて数分のところにあります。

今年は9/2-9/4に開催
このブログでは各日の基調講演の内容と, いくつかのセッションに絞ってお伝えします. セッションの内容のBlog等への公開はご遠慮願いたいとのことなのでセッションの画像は載せられません.
各講演の内容はすでに多くのニュースサイトで紹介されていますし, 講演の資料も後日少しずつ公開されます(http://cedil.cesa.or.jp/)から, ここでは感想だけにとどめておきます. 詳しく知りたい方はそちらをどうぞ.
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[1日目 : 9月2日]
今日の基調講演は「物語の力(冲方 丁さん (作家)]」です.
物語とは何か, 人にどういった影響を与えてきたのか, 物語の発生から現代的な物語の形成, さらに今後物語がどういった存在になるか, そのときゲームが持つ役割とは等, ゲームの背景にある物語の持つ役割を語ってくださりました.
必ずしも技術的な面だけを伝えるのがCEDECの役割ではなく, 企画や運営に関することを伝える面もあります. この講演は心構えというかゲームの持つ影響力を物語の側面から考えるといった内容だったと思いました.
[2日目 : 9月3日]
基調講演は「ウェアラブルコンピューティングの動向とウェアラブルゲームへの展開(塚本 昌彦 神戸大学大学院工学研究科 教授)」です. ウェアラブルデバイスを装着し続けて10数年になる塚本先生が, 今後のwearable deviceの動向とゲーム応用について講演しました. 近年ネット空間が大きくなりすぎて, 人類に害を与えていること(一日中家に引きこもる, 自閉症等), これからは実空間を充実させるべきだということから, ずっとウェアラブルデバイスを身に着けていて気付いたこと, 今後どういったデバイスがはやりそうか, はやるために必要な機能とは等, ウェアラブルデバイスがあふれる未来がすぐ(もう?)来ていることを予見させるものでした. また, ゲームへの展開に関しては, 昔の遊びを再考することがウェアラブルゲーム創作のヒントになるとして, いくつかのゲーム案を示してくださりました. 将来生まれる子供たちの遊びはとてもハイテクで, 室内でゲームをするだけでなく外で遊ぶ子供も今より増えそうですね.
[3日目 : 9月4日]
最終日の基調講演は「これからのゲームとゲームクリエイター(名越 稔洋 株式会社 セガ 取締役CCO(Chief Creative Officer))
」です. 「龍が如く」で有名な氏がこれからゲーム市場はどうなるだろうか, そのときクリエイターはどういった心構えを持つべきかといった内容で講演なさりました. 研究にも生かせる教訓として, 「自分の興味の幅を広げよう」というものがありました. 自分の作りたいものと, 今の資材(予算とか時間)で作れるものの領域は必ずしも一致しない, 「今の資材で作れそうなもの」の領域はなかなか広がりそうにないから, 自分の興味を広げて作りたいものと作れるものを一致させようといった趣旨だったと思います. 「作りたい」を「研究」, 「資材」を「時間, 自分の能力」に置き換えてみますと, 「興味を増やすようにサーベイをしていけば, これぞと思うものが見つかる」といった意味にとれそうです.
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気になったセッションがありましたので紹介します.
まずProject Morpheusについてのセッションがありました.
MorpheusとはSONYが開発中の新型ヘッドマウントディスプレイ(http://www.jp.playstation.com/info/release/nr_20140319_morpheus.html)です. デモ機を試すことができたので, 体感してきました. 会場では整理券が配られ, 指定した時間内でないと体験できないようでした.
Mopheusの外見は上記URLからどうぞ.
黒い長方形の物体が前方で, この中にレンズユニットが内蔵されています. 後ろにある白黒の曲がった部分で頭とディスプレイを固定します. レンズユニット部分は前後にスライドするようになっていて, 焦点を合わせるのに使います. またこのスライド機構によって, メガネをかけていても使えます.
この手のHMDではOculus Riftが有名ですが, Oculusよりは軽く, また映像も鮮明になっていました. ただし, 頭を固定するヘッドセット部分の締め付けが少しきつかったこと, 緩めようとするとレンズユニットが多少動いて, 焦点ブレが起こってしまったことが少し残念です.
Morpheusではデモゲームをプレイできました. ゲーム名は「THE DEEP」と「THE CASTLE」の二つです. この二つのゲームのうち今回プレイできたのはTHE DEEPの方です. 深海に潜るダイバーとなって, 美しい海に突如現れたサメを手に持った光線銃でやっつけるという趣旨でした. Morpheusだけでなく, ヘッドフォンをつけてプレイしたので, 音の臨場感もプラスされて, 本当に海の中にいるかのような没入感を得ることができました. 立ってプレイするゲームで, 係員の方から「プレイ中その場を動かないでください」と言われました. 映像の中にはプレイヤーの手も映っていましたが, サメが襲ってくるとき驚いて思わずその場をうごいてしまい, 映像中の手の位置が実空間にある手の位置と少しずれてしまいました. 今後のプレイの際には, こういった「ずれ」をいかになくすかも重要かと思います. のちにあったMorpheusの講演では, 仮想空間を体験していると, 人は動作がゆっくりに(まるで現実世界で初めて訪れた場所をゆっくりと自分の足で探索するかのように)なるそうです. また仮想空間への高い没入感を得るためには自分の体の一部を描画してあげるといいそうです. 現実空間でも, どんな状況でも見渡せば自分の体が見えますが, 仮想空間でもそのようにすべきということでしょう. そういった事情がある中で, 仮想空間内でその場から動かずにいるというのは, プレイヤの好奇心を削ぐ形になりますし, 動くと現実と仮想の体がずれてしまうのも, 没入感を削ぐことになってしまうかと思いました.
Morpheusについては体験だけでなく講演もありました. そこではVRというコンテンツを作るために必要な要素を公開していました. そのうちいくつかを紹介します. 数が多いので全て知りたい方は公開される(予定のはず)講演資料を参考にしてください.
・VRコンテンツとは, テーマパークのアトラクションを作る感じでゲームデザインすること
今までと同じ感じでゲームコンテンツを作ってはいけない. 既存のゲーム用素材(3Dモデルとか)は引き継げますが, ゲームデザインだけは再考するべき.
・急な加速など, 現実世界でも気持ちが悪くなる動きはしないこと
・カメラの動きはプレイヤーの頭の動きに同期させる
・プレイヤーと現実の姿勢を合わせること
・手の先など, 身体の一部を見せる(影とかでもいい)と高い没入感を得ることができて効果的.
・キャラの動く速さは現実と同じにする
・VRコンテンツ体験中は動作がゆっくりになる傾向にある. プレイヤーの動きを現実に合わせる(ゲームだからといって歩く速さを変えたりしない)ことで, プレイヤがVR世界を楽しんでくれる.
研究室でVRコンテンツを作ることがあれば参考になると思います.
講演の最後は「百閒は一体験にしかず」という言葉で終わりました. VRコンテンツに関しては, 言葉や体験映像をどれだけみようと, 実際に体験してみることが大事だという意味だと思います.
もう一つ, 「「つもり」をデザインする」というセッションが, 三人の講師によって開かれました.
三人の講演者が順番に, ユーザが操作した「つもりデザイン」という観点に着目したUIやゲームデザインに関する講演をなさりました. ユーザが思った行動結果と, 実際に行われているシステムの内部動作は必ずしも期待通りでないということを具体例を交えてお話してくださりました. 講演者の簗瀬洋平さんはこのセッションに関するデモも行っていました. 誰でもゲームプレイがうまくなった「つもり」になれるシューティングゲームの展示です. ユーザから見れば何も変わりないのに, システム内部ではユーザの操作ミスに応じた難易度調整が行われており, ミスしているのにゲームプレイが上達したかのように錯覚できます. この「こっそりシステムが作業のアシストをしてくれていて, ユーザに飽きさせないような体験をさせてくれる」というのは, この研究室の研究分野ではユーザが新しいことを学習する際に, 飽きさせず, 楽しんで学ばせることができるような学習システムの設計といった分野で役立つと思いました. ただ簗瀬さんもおっしゃられていましたが, このときシステムがユーザをアシストしているということを悟られないようにするゲームデザインが大事になるということ. ユーザは, 真剣に学習に取り組んだ結果として学習成果がでる, ということを期待しているのに, 実際は, システムが難易度を調整してくれたから得られた学習成果だった, と分かったらユーザは興ざめしてしまう, といったことだと思いました.
いかがでしたでしょうか.
今回はインタラクティブなメディアの設計として, 「ゲーム」に焦点をあてたCEDECに参加しました. 今回詳しくは書きませんでしたが, 多くの企業デモ, 学生や研究者によるデモ(インタラクティブセッション)もありました. 企業ブースでは, 普段大学でみる技術が, 企業で製品として出すレベルまで昇華されていて, そのクオリティの高さに感動しました. 学生や研究者によるデモでは, ほかの大学(一部企業)が行っている研究成果をデモとして体験しました. どれもユニークで, 近い将来みなさんの生活に密着しそうな技術もありました.
また行ってみたいものです.
ではまた次回.