月別アーカイブ: 2015年3月

2015 スプリングセミナー

寒さもようやく衰えはじめ,木々も緑日ごとに色めく季節,皆さんはいかがお過ごしでしょうか.
今回は例年お馴染みのスプリングセミナーについてお知らせさせていただきたいと思います.

スプリングセミナーでは来ていただいた方たちに,実際に手を動かしながら,研究室のテーマを体験していただこうという催しです.実際に体験していただくことで,より詳しい理解や,作ることの難しさ,出来た時の喜びを感じてもらえるので,より身近に研究を知る機会になるのではないでしょうか.

我々の研究室には9人もの精鋭がいらしてくださいました.本当にありがたい限りです.
もちろん,さあでは作ってください,という訳にはいかないので,我々の研究室からは,助教の武富先生,M1の小島,酒井,瀬戸,早田がお手伝いさせていただきました.今回,実際に作ってもらうのはARToolKitによるプログラミングとプロジェクションマッピング,どれも我が研究室ではお馴染みのテーマですね~


ARToolKitグループにはまず,ARマーカをひとつカメラに写すと3Dのタチコマが表示されるという基本プログラムが与えられ,それをベースに課題に取り組みました.課題は大きく分けて2つあり,ひとつは画面上をマウスでクリックしている時にタチコマを画面上に固定する,もうひとつはクリックしたマウスボタンを解放するとその時点でのマーカとの位置関係を維持したままタチコマをマーカの動きに追従させるというもの.また,ARToolKitの仕組みを理解する一環として課題のはじめに認識するマーカを2つに増やす作業を行いました.
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開始直後は,基本プログラムを実行してマーカに追従するタチコマの動きを見て感心している場面もありましたが,数分もすると皆さん真剣な面持ちで課題に取り組んでいました.ARToolKitでは用意された関数を用いることで簡単にARアプリケーションを実装することができるため,C++を初めて使う人もネットで関数を調べることで比較的スムーズにプログラムの作成が行えている様子でした.その一方で,2つのマーカ間の距離を求める際などにマーカ座標系やカメラ座標系の間で座標変換を考える必要があり,その考え方やどの順番でどの座標変換行列を用いるかを考える部分で苦戦しているようでした.
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しかし,どの学生さんも根気強く調べたり積極的に質問をしたりすることで,2日めの終了時間1時間程前にはほとんどの方が与えられた課題をクリアしていました!その後は日頃の研究室の様子を話したり進学に関しての質問などに答えたりして,終了時間を迎えました.
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プロジェクションマッピンググループにも,まずは基本となるソースコードが与えられ,その虫食い部分を埋めていくという課題が与えられました.こちらの最終目標は,立方体のオブジェクトにペン先を近づけるとその位置に青色や赤色の点がプロジェクションされ,模様や文字を描くことができるようにしようというものでした.

これを実現するために,最初はARマーカをペンに貼り付け,マーカ座標系におけるペン先座標の位置を計算しました.これは単なる数値の設定だったので,みんな難なくこなしていました.次に,プロジェクタと物体間の座標変換を行うために,プロジェクタパラメータの計算部分を考えました.ここは,座標変換行列の計算が必要となってくるため,パソコンだけでなく紙とペンを使って行列式の計算を実施しました.この課題,最初からプログラムを書こうとしても???となる部分が多いみたいでしたが,紙に書きながら順に整理していくことで,みんな解くことができていました.
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3つ目の課題では,プロジェクタ画面座標系におけるペン先座標を求める座標変換を考えてもらいました.これも行列の計算であるので,要領をつかんだ人はすぐに回答をするほどで,みなさんのセンスの良さを感じました.

最後には追加課題として,ペン先と立方体の物体の衝突判定を行い,衝突時にはその位置に赤や青,緑の点をプロジェクションするというところまで行いました.さすがにここは,言語の書法等で難しい部分ではあったので,サンプルコードを見ながらプログラムの流れを勉強しました.書き方はわからずとも,処理の流れの部分は「なるほど,こういうことか!」と理解してもらえたようでしたので,最後にはいろいろお絵描きして遊びました.一度も触れたことのない言語で書くのは大変な経験だったとは思いましたが,理論の部分を理解してもらえたので,みなさんにはいい経験となったことと思います.
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皆さん,なんとか2日間のテーマをやりきり,なんとか完成.
ハードな課題だったにもかかわらず,時間を余して,歓談タイム.外国人とのトークもこの研究室ならでは.
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研究室についてのお話や受験の心得,研究に関するお話など,楽しいひと時でした!
この中から未来のIMDラボメンバーが現れるのを楽しみにしてます!

2015年3月 CICP発表会

 こんにちは、M1の酒井です。

 2015/3/5-7にスプリングセミナー&オープンキャンパスが行われましたが、そのとき同時にCICPの発表会も行われていました。スプリングセミナーやオープンキャンパスに参加された方々の中には、展示をご覧になった方もいるかもしれません。今回はそのときの発表会の内容をお伝えします。

 まずCICPについて説明します。
 CICP(Creative and International Competitiveness Project)は、NAIST情報科学研究科での教育事業です。学生自らが挑戦的な研究テーマを提案し、予算を獲得、おおよそ1年間でその実現を目指します。今年は以下のようなテーマが出ました。


通常トラック

    • VuRari 一人旅 〜VR旅行でセルフィー(自撮り)〜
      (Virtual Traveling and Selfie System ~VuRari 一人旅~)
    • そのツイート、ほんとうに大丈夫?炎上予防アプリ“炎女医”の開発
      (r u sure about the tweet?” ENJOY: the flaming prevention system)
    • 写ラナイんです(余計なモノが)
      (An Object Removing System based on Light Field Acquiring)
    • グリーン Inc. ビデオテックブログ
      (Green Inc. Video TechBlog)
    • 小型クアッドコプターと頭部装着ディスプレイを用いた没入型テレプレゼンス・テレコミュニケーションシステム
      (Immersive Telepresence and telecommunication system with head-mounted display and Quadcopter)
    • トンドル ~ 翼を授ける
      (TonDol ~Gives You Wings~)
    • Bikepad : 自転車ゲームコントローラ
      (Bikepad : Bicycle-based game controller)
    • 自作CTスキャナで身の回りの物を調べてみよう
      (DIY CT scanner ~Let’s scan everything in our daily life~)

IPGP-2013トラック

    • いこう スタンプ: 電子グッズスタンプ
      (eCOstamp: Electronic Collectible Stamps)
    • DARTによる信頼性のあるマシンオートメーションのためのヒューマンインターフェース
      (Dependable Gesture-based Human-Machine Interface for Machine Automation using DART Technology)
    • NAIST NAV : 奈良先端科学技術大学院大学オープンキャンパスナビゲーションと情報サービス
      (NAIST-NAIST-NAV: NAIST Open Campus Navigation and Information Service)
    • HerbsMed: ジャムと漢方薬を用いた薬用植物アプリケーション
      (Herbs Med: Herbal Medicine Apps using Integrated Jamu and Kampo Formulas)

IPGP-2014トラック

    • トラベルアドバイザー
      (Travel Advisor)
    • 高校物理実験のためのトラッキング技術を用いた物理測定に関する研究
      (Physical Measurements Using Tracking Technologies for High School Physics Experiment)
    • アクションおよび心拍認識による高齢者見守りのためのマルチメディア異常検出
      (Multimedia Abnormal Detection for Elders via Action and Pulse Recognition)
    • 発展途上国における双方向番組を用いたeラーニングの検討
      (Survey on Interactive TV as e-Learning Tool for Students in Developing Countries.)

 私は
そのツイート、ほんとうに大丈夫? 炎上予防アプリ“炎女医”の開発
(r u sure about the tweet?” ENJOY: the flaming prevention system)
というテーマに取り組みました。

 Twitterでの炎上が話題になる昨今、それを未然に防ぐことはできないかというアイデアから生まれたテーマで、メンバーは自然言語処理研究室から3人、インタラクティブメディア設計学研究室から私1人の計4人です。Webアプリケーションとして制作しました。詳しい動作原理は省きますが、ユーザが入力したツイートを自然言語処理の力を使って解析、炎上指数と炎上しそうな単語検知、その単語を炎上しにくい表現に変えたツイート、さらに元のツイートをそのまま呟いた場合に帰ってくることが予想されるほかの人からの返答を提示します。

はじめの画面

はじめの画面

入力例

入力例

 私が担当したのはシステムのUI部分。主にbootstrapというライブラリを使って製作しました。情報を1画面にコンパクトにまとめて、「炎女医」という名の通り、白と赤を基調にしたデザインに仕上げました。twitterクライアントとしても使えるように、twitterのタイムラインも取得できます。画面にうつる女の子がマスコットキャラクターの「炎女医ちゃん」。ユーザが入力したツイートを診断してくれます。
 制作したアプリをこのスプリングセミナー/オープンキャンパスの間来てくださった方々にお見せしました。CICPはこの展示期間の間、参加者による投票も同時に行われ、もっとも票を集めたチームには商品が出るそうです。

展示の様子

ポスター展示の様子


会場の様子

会場の様子

 初日3/5(木)は簡単なプレゼンテーションがあり、本番は2日目の3/6(金)からありました。この日はスプリングセミナーの最終日でもあり、参加者はスプリングセミナーの受講者に限られました。短い時間ではありましたが、多くの参加者にデモを見てもらうことができました。また、ほかの班も非常に完成度の高い作品を紹介していました。この発表会に参加された方も、発表した方も、楽しめる企画だったかと思います。また最終日3/7(土)のオープンキャンパスには、一般の方々にも展示を見てもらいました。かなりの人が来場し、大混雑でした。

 CICPはコミュニケーション力を鍛えるプロジェクトでもあります。二日間で多くの参加者に説明するうちに、どういう順序で伝えて、いつデモを触ってもらうか、など、うまく相手に情報を伝達するいはどうすればいいかが身についてきます。

 このブログを見ている皆さんで、CICPに興味を持たれた方はぜひ参加してみてください。きっと密度の濃い一年を過ごせると思います。

(なお本ブログで掲載したアプリケーション「炎女医」に関する情報は、すべて開発中のものです)