月別アーカイブ: 2019年12月

質感のつどい+多元質感知 国際フォーラム

今年度9月に博士課程を修了し,ポスドクにジョブチェンジを果たしました秋山です.3月までは引き続きIMDにお世話になります.
今回は12/4に京都大学で行われた質感のつどいの公開フォーラムと,12/5, 6に同会場で行われた多元質感知の国際フォーラムに聴講に行って来ましたので少し内容をご紹介したいと思います.

 

 

 

 

 

 

この連日のイベントは「質感」に関係する研究についての公演や議論を行う場です.質感に関する研究は多岐に渡ります.例えば,透明感や光沢感などの質感を脳内では視覚情報をどのように処理することにより知覚しているのかを解明しようという研究や,コンピュータグラフィックスによって様々な質感を再現するための方法を提案する研究などです.

個人的に印象的だった研究をひとつ紹介したいと思います.私はプロジェクタによって錯視を誘発することによって知覚的に実物体の色彩を変化させる研究を行っているのですが,今回の発表の中に,「目の色によってその人が感じる錯視の効果が異なる」という内容の発表がありました.扱っている錯視は私のものとは違うものの,ただの個人差として片付けていた錯視量の違いが目の色に起因するものかもしれないというのはとても勉強になりました.

また,デモや展示を行っている研究者の方々もいらっしゃいました.そのひとつが以下の写真にあるものです.以下の写真は様々な表面の質感をもった漆塗りのプレートを日本語のオノマトペによってマッピングしたものです.人の知覚する質感をどうにか言語化しようとしているのがオノマトペだと思うのですが,その2つの要素が1対1対応で展示されているのを見ると,視覚情報からの質感を音声情報であるオノマトペに変換する脳内の工程を解明するヒントがあるかもしれないと思いました.

 

 

 

 

 

 

本研究室で研究しているテーマの一つである拡張現実感では,現実世界にデジタルコンテンツを視覚的に融合させることで現実世界を拡張することを目指しています.その際に,表示するコンピュータグラフィックスが現実にはあり得ないような見た目であった場合,うまく現実世界とデジタルコンテンツを融合させることはできないでしょう.そのキーのひとつになるのが質感なのではないかと私は思います.現実世界とデジタルコンテンツがシームレスに存在するように見せるためには,表示するグラフィックスがいかにもCGといった質感ではなく,その物体があたかも目の前に存在するかのような質感を再現することができれば,より現実感の高い拡張現実感が実現できるのではないでしょうか.拡張現実感のように最終的に人に観察させることが目的の技術は,質感のように知覚的な要素も考慮することが求められることを再確認できました.

ここまでお読みいただき,ありがとうございました.