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海外派遣メンバー

海外派遣メンバー・インタビュー
#01

吉武 康栄 准教授

鹿屋体育大学

インタビュー 2018年3月1日

サッカー少年から「発想勝負」の研究者へ

子どもの頃はサッカー選手になるのが夢で、大学時代までサッカーに打ち込んでいた。入学時には関西学生リーグ3部だった大阪市立大サッカー部は、自身がレギュラーとして加わって1部まで昇格した。スポーツ推薦で優秀な選手を集める仕組みを持たない公立の総合大学としては異例の好成績だった。

パフォーマンスを向上させるスポーツ用具の開発に興味があり、それを手がける企業への就職を考えていたが、京都大学大学院時代に森谷敏夫教授(現・京都産業大)の指導で研究の面白さに魅せられ、研究者の道を選んだ。モノマネでなく独創性を重視する姿勢に、大きな影響を受けたという。

「研究は発想勝負や、論文を読んでその先を展開する研究ネタを二つぐらい見つけられないなら研究者をやめろ、と良く言われました。誰も今まで気づいていなかった生体のメカニズムや機能を発見出来たときは、本当に興奮しますよ」

ガンダムをヒントに思い込みの壁超えたい

同時代の子どもたちの多くが夢中になったアニメ「機動戦士ガンダム」にも、影響を受けているそうだ。アニメの主人公は「モビルスーツ」と呼ばれるロボットを操ることがきっかけとなって、従来の人間を超えた人類「ニュータイプ」に進化していく。「画期的な運動学習方法を開発して、ニュータイプに近づけるようになりたい。ここまでしか出来ないだろうと人が思い込みで築いてきた壁を破り、さらにパフォーマンスを向上させる、そんな環境を作りたい」

高感度カメラやモーションキャプチャーなどの発達で、スポーツ科学の分野では解析する技術は進んだが、その成果を選手の技術向上に繋げられていないのが現状だという。「あなたは一流選手とここが違います、とパソコン画面で複雑なデータを示されても、簡単に上手くなれるわけないですよね」

解析結果をうまく選手にフィードバックするにはどうすればよいかスポーツ科学の研究者は模索していた。一方、拡張現実など工学の最先端分野の研究者は、スポーツ科学にそんな需要があることを知らなかった。そこで両分野の融合研究を進め、ニュータイプ育成に役立てようとねらっている。

「例えば、いくつかの筋肉をバランス良く使った時だけ綺麗な音色が発生するような仕組みがあれば、リアルタイムに動作を確認しながらトレーニングできる。これまでよりぐんと効率が良くなります。しかも頭を使いながらトレーニングできるので、従来の筋トレより認知機能の使用度もあがる。トップアスリートだけでなく、運動嫌いの児童や認知機能が低下する高齢者にも役立ちます」

豪大学の活発な議論、日本でも

現在、オーストラリア・クイーンズランド大に滞在して研究している。大学院生が教授に堂々と「No」と言って議論をふっかけている場面が羨ましかったという。「日本では年齢・地位が意識されすぎている面があり、学生は遠慮したり、萎縮したりしています。生意気な大学院生、異分野の研究者たちが、お互いに『面白い発想だな』と刺激を受け合い、議論できるような雰囲気に、日本でも近づけたらなと思っています」