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海外派遣メンバー

海外派遣メンバー・インタビュー
#07

小林 泰介 助教

奈良先端科学技術大学院大学

インタビュー 2018年11月6日

「自由さ」「多様性」がロボット研究の魅力

その自由さがロボット研究の魅力だという。

他の多くの研究分野では「ある現象を解き明かす」「難しい定理を証明する」といった明確な一つのゴールを目指して多くの研究者が競い合う。ロボット研究の分野は様相が異なり、多種多様な到達点がある。そして実社会への応用も幅広い自由度があるというのだ。

数学の大学教授である父親を身近で見ていたこともあり、研究者という職業が自分にも向いているかも知れないと思ったのは中学生のころだったそうだ。「他人の言うことを聞いて働くことは性に合わない。研究者は自分が興味を持ったことを自由に勉学している印象が強く、それがいいなあ、と思っていました」

研究の面白さは、回答がはっきりしていないところにあるという。高校時代に、実験を計画から考える理科の授業を受ける機会があり、その面白さに目覚めた。「こうなるんじゃないか、という筋道を考えて、実験や研究を進める。予測とは異なる結果にたどり着くこともあるが、それを解釈することで新しい発見につながるかもしれない。正解をまだ誰も知らない、それが魅力的です」

「ドラえもん」のような柔らかさを目指す

ロボットの中では、「ドラえもん」みたいに人と同じように振る舞う柔らかいロボットに関心がある。

現在主流のロボットは、硬いボディ、硬い関節を持つ。そして全身ガチガチに筋肉で固まった人のように、カチッカチッと精密に制御されてきた。動きの精度を高めるためだ。

一方、柔らかなロボットは、人に押されたり触られたりしたら、それに応じて引いたり支えたりし、うまく協調して動くことを目指している。ただし、柔らかく動くようにすれば、位置を制御するのが難しくなる。

「ドラえもんを作り出すのは、20年先にはまだ難しいかも知れません。研究テーマがたくさんある、これからの領域です」

一から自分で中身を把握して作り上げるロボットで、人と同じような振る舞いが再現できれば、人そのものの理解も、より深めることが出来るのではないかとも考えている。

人をパートナーに、ロボットが社交ダンスを踊る

現在は、ドイツのミュンヘン工科大学(TUM)に滞在して研究中だ。TUMでの所属先はロボットの触覚に強い研究室。その蓄積を、自身が強みを持つロボット歩行の研究成果と組み合わせ、社交ダンスが出来るロボットを作ることを目標にしている。

「人間と手を組んで踊れることを目指しています。なかなか絵になるでしょう?」

社交ダンスロボットは、パートナーに押された時に、それを感じ取って適切な力加減で反応したり、パートナーの動きに合わせて、その動きを妨げないようにステップを踏んだり出来なければいけない。「今はシミュレーション段階。一つ一つ課題を解決しながら、実機で試して進めていきます」

柔らかく人と一緒に動けるロボットは、介護の分野などでも登場が待ち望まれている。